夏井いつき 17音の旅 第21回 季語「春愁」/三春

今日の一句

3月18日(木) 季語「 春愁 はるうれい・しゅんしゅう」/三春

 ばばは、めしくことを自分の仕事としているのである。自分の炊く飯を家族みな美味うまいと思ってくれていると、信じているのである。若い者たちの役に立ちたいと、願ってもいるのである。
 だが、婆の炊く飯はやわらかすぎる。水が多すぎてベチャベチャなのだ。家族たちはみなそろって、いただきますと手を合わせ、飯碗を持ち、はしをとり、米粒感のない舌ざわりにささやかなうれいを感じつつ、黙ってしょくす。ひらがな書きのような春の愁いにユーモアもにじむ。

About the author

1957年、愛媛県生まれ。中学校国語教諭の後、俳人へ転身。藍生俳句会会員。「第8回俳壇賞」受賞。創作活動に加え、俳句集団「いつき組」組長として、俳句の授業「句会ライブ」、全国高等学校俳句選手権「俳句甲子園」の創設にも携わるなど幅広く活動中。TBS系「プレバト!!」俳句コーナー出演などテレビ・ラジオにも出演多数。松山市公式俳句サイト「俳句ポスト365」、朝日新聞愛媛俳壇、愛媛新聞日曜版小中学生俳句欄、各選者。2015年より初代俳都松山大使。

『句集 伊月集 龍』(朝日出版社)、『「月」の歳時記』(世界文化社)、『季語道場』(NHK出版)、『おウチde俳句』(朝日出版社)など著書多数。