夏井いつき 17音の旅 第27回

今日の一句

4月8日(木) 季語「らっ」/晩春

渡辺水巴(わたなべ・すいは) 1882年〜1946年、俳人。

 らっへ手をのばす。桜の花びらのささやかな浮力。静かな風のゆらぎ。てのひらをよけるように落ちてゆく花びらたち。
 上五「てのひら」の一語は我が手を意識させ、助詞「に」は広げた掌の面を思わせる。そして私たちの脳は一瞬、「落花」の背後に美しい青空を見る。その無意識に刷り込まれるサブリミナル効果によって、下五で一気に夜となる暗転に驚き、「月夜かな」の詠嘆えいたんに息をのむ。(三大季語「雪月花」のうちの)花と月の音なき舞台が、そこにる。

About the author

1957年、愛媛県生まれ。中学校国語教諭の後、俳人へ転身。藍生俳句会会員。「第8回俳壇賞」受賞。創作活動に加え、俳句集団「いつき組」組長として、俳句の授業「句会ライブ」、全国高等学校俳句選手権「俳句甲子園」の創設にも携わるなど幅広く活動中。TBS系「プレバト!!」俳句コーナー出演などテレビ・ラジオにも出演多数。松山市公式俳句サイト「俳句ポスト365」、朝日新聞愛媛俳壇、愛媛新聞日曜版小中学生俳句欄、各選者。2015年より初代俳都松山大使。

『句集 伊月集 龍』(朝日出版社)、『「月」の歳時記』(世界文化社)、『季語道場』(NHK出版)、『おウチde俳句』(朝日出版社)など著書多数。