夏井いつき 17音の旅 第28回 季語「蝶」/三春

今日の一句

4月12日(月) 季語「ちょう」/三春

原石鼎(はら・せきてい) 1886年〜1951年、俳人。

 人の脳が言葉を映像化するメカニズムが面白い。俳句においては、その効果が顕著にみられ興味深い。上五「高々と」とあれば、私たちは否応いやおうなく頭上を見上げる。そこに現れるのが「ちょう」。背景には春の柔らかい青空も見えているはずだ。
 この句のきもは、後半の展開。小さな「蝶」が越えようとしているのは「谷」だ。視野が眼下に広がることで、一句の世界は立体的に立ち上がる。「深さかな」の詠嘆えいたんは、乗り出してのぞき込む視線。たった17音のパノラマ映像だ。

About the author

1957年、愛媛県生まれ。中学校国語教諭の後、俳人へ転身。藍生俳句会会員。「第8回俳壇賞」受賞。創作活動に加え、俳句集団「いつき組」組長として、俳句の授業「句会ライブ」、全国高等学校俳句選手権「俳句甲子園」の創設にも携わるなど幅広く活動中。TBS系「プレバト!!」俳句コーナー出演などテレビ・ラジオにも出演多数。松山市公式俳句サイト「俳句ポスト365」、朝日新聞愛媛俳壇、愛媛新聞日曜版小中学生俳句欄、各選者。2015年より初代俳都松山大使。

『句集 伊月集 龍』(朝日出版社)、『「月」の歳時記』(世界文化社)、『季語道場』(NHK出版)、『おウチde俳句』(朝日出版社)など著書多数。