夏井いつき 17音の旅 第33回

今日の一句

4月29日(祝日) 昭和の日 季語「春しむ」/晩春

久保田万太郎(くぼた・まんたろう) 1889年〜1963年、小説家・劇作家・俳人。

 こんな句を見せられると、どう鑑賞せよと? と、笑ってしまう。だってパンにバターつけてるだけなのだもの。
「春おしむ」のような映像をもたない時候の季語を扱う場合、五感情報を取り合わせるのがじょうせきだ。作者万太郎にとって「春惜む」とは、とろんと溶けるバターの感触であり、焼けたパンとバターの匂いであり、「たつぷり」とつける幸福感でもあったのだ。「バタ」という英語っぽい表記にささやかな贅沢感が匂うとともに、ある時代のお洒落しゃれ感も漂う。

About the author

1957年、愛媛県生まれ。中学校国語教諭の後、俳人へ転身。藍生俳句会会員。「第8回俳壇賞」受賞。創作活動に加え、俳句集団「いつき組」組長として、俳句の授業「句会ライブ」、全国高等学校俳句選手権「俳句甲子園」の創設にも携わるなど幅広く活動中。TBS系「プレバト!!」俳句コーナー出演などテレビ・ラジオにも出演多数。松山市公式俳句サイト「俳句ポスト365」、朝日新聞愛媛俳壇、愛媛新聞日曜版小中学生俳句欄、各選者。2015年より初代俳都松山大使。

『句集 伊月集 龍』(朝日出版社)、『「月」の歳時記』(世界文化社)、『季語道場』(NHK出版)、『おウチde俳句』(朝日出版社)など著書多数。