夏井いつき 17音の旅 第34回 季語「行く春」/晩春

今日の一句

5月3日(月) 季語「行く春」/ばんしゅん

佐藤春夫(さとう・はるお) 1892〜1964年、詩人・小説家。

 調べてみると、昭和39年、上野の西洋美術館にミロのビーナス展をに行った時の作だと分かった。「見下しつ仰ぎつ春の女神かな」「春灯立たす女神の腹ひかる」「春の夜の夢かとばかり眺めける」と並んで新聞に載った一句だという。ハッとしたのは亡くなった日付だ。昭和39年5月6日とある。自宅にてラジオ録音中、心筋梗塞しんきんこうそくにて死去。春の女神は老いることなく、春の夜の夢かとばかりに女神を見上げた詩人は、突然、息を引きとる。行く春の甘やかな無常。

About the author

1957年、愛媛県生まれ。中学校国語教諭の後、俳人へ転身。藍生俳句会会員。「第8回俳壇賞」受賞。創作活動に加え、俳句集団「いつき組」組長として、俳句の授業「句会ライブ」、全国高等学校俳句選手権「俳句甲子園」の創設にも携わるなど幅広く活動中。TBS系「プレバト!!」俳句コーナー出演などテレビ・ラジオにも出演多数。松山市公式俳句サイト「俳句ポスト365」、朝日新聞愛媛俳壇、愛媛新聞日曜版小中学生俳句欄、各選者。2015年より初代俳都松山大使。

『句集 伊月集 龍』(朝日出版社)、『「月」の歳時記』(世界文化社)、『季語道場』(NHK出版)、『おウチde俳句』(朝日出版社)など著書多数。