夏井いつき 17音の旅 第37回

今日の一句

5月13日(木) 季語「たん」/初夏

与謝蕪村(よさ・ぶそん) 1716〜1784年、俳人・画家。

 心に触れた美しい光景を描写するのは実に難しいことだが、この句に感嘆させられるのは、言葉以上の映像を内包しているから。
 句中に明確な指定はないが、「二三片」は最初に散ったそれを思う。でてきたたんに、散るという変化が起きた日の心の動き。
 色の情報もないのだから、あかい牡丹を思い、その色に命のイメージを重ねて読む人がいてもいい。でも、私はなぜか白い牡丹を思う。「うちかさなりぬ」という措辞そじが、白い花片の透き通った陰影を思わせるのかもしれない。それは、美しい初夏のひかりだ。

About the author

1957年、愛媛県生まれ。中学校国語教諭の後、俳人へ転身。藍生俳句会会員。「第8回俳壇賞」受賞。創作活動に加え、俳句集団「いつき組」組長として、俳句の授業「句会ライブ」、全国高等学校俳句選手権「俳句甲子園」の創設にも携わるなど幅広く活動中。TBS系「プレバト!!」俳句コーナー出演などテレビ・ラジオにも出演多数。松山市公式俳句サイト「俳句ポスト365」、朝日新聞愛媛俳壇、愛媛新聞日曜版小中学生俳句欄、各選者。2015年より初代俳都松山大使。

『句集 伊月集 龍』(朝日出版社)、『「月」の歳時記』(世界文化社)、『季語道場』(NHK出版)、『おウチde俳句』(朝日出版社)など著書多数。