夏井いつき 17音の旅 第46回 季語「蜻蛉生る」/仲夏

今日の一句

6月14日(月) 季語「蜻蛉とんぼうまる」/仲夏

 ヤゴの背中が割れ、蜻蛉とんぼの首、頭がむくむくと出てくる。灰色のからから長い胴体が引き出される。れてたたまれていた羽が、次第に伸びていく。羽が乾き始める時間。透き通っていく時間。羽を数度動かす。羽が光る。飛び立つ。その瞬間を「たちまち」と書き、蜻蛉の「空」が一気に「立体」となる、と表現する。散文で書けばこれだけの言葉を要する映像を、たった十七音で切り取る。観察記録が芸術作品になる瞬間を、私たちは今ともに目撃し、感嘆する。

About the author

1957年、愛媛県生まれ。中学校国語教諭の後、俳人へ転身。藍生俳句会会員。「第8回俳壇賞」受賞。創作活動に加え、俳句集団「いつき組」組長として、俳句の授業「句会ライブ」、全国高等学校俳句選手権「俳句甲子園」の創設にも携わるなど幅広く活動中。TBS系「プレバト!!」俳句コーナー出演などテレビ・ラジオにも出演多数。松山市公式俳句サイト「俳句ポスト365」、朝日新聞愛媛俳壇、愛媛新聞日曜版小中学生俳句欄、各選者。2015年より初代俳都松山大使。

『句集 伊月集 龍』(朝日出版社)、『「月」の歳時記』(世界文化社)、『季語道場』(NHK出版)、『おウチde俳句』(朝日出版社)など著書多数。