夏井いつき 17音の旅 第47回

今日の一句

6月17日(木) 季語「ひきがえる」/三夏

宮沢賢治(みやざわ・けんじ) 1896〜1933年、詩人・童話作家・農芸化学者・農村指導者・宗教思想家。

 ひきがえるがゆっくりと動き出す。ただ歩いているだけなのに「ひたすら」と描写し「せまりけり」と詠嘆えいたんすることで、蟇の歩みが詩となっていく。なぜ蟇は月に向かって歩いているのか。この切迫せっぱくした歩みはなんだろう。読み手はここから詩の世界へ踏み入っていくのだ。
 蟇はグロテスクな見かけの上、毒を持つ等の性質によりきらわれがちだが、クウィーンクウィーンと切ないいぬのように鳴く。あの声を一度聞けば、「ひたすら」の一語が一層いっそう身にみるに違いない。

About the author

1957年、愛媛県生まれ。中学校国語教諭の後、俳人へ転身。藍生俳句会会員。「第8回俳壇賞」受賞。創作活動に加え、俳句集団「いつき組」組長として、俳句の授業「句会ライブ」、全国高等学校俳句選手権「俳句甲子園」の創設にも携わるなど幅広く活動中。TBS系「プレバト!!」俳句コーナー出演などテレビ・ラジオにも出演多数。松山市公式俳句サイト「俳句ポスト365」、朝日新聞愛媛俳壇、愛媛新聞日曜版小中学生俳句欄、各選者。2015年より初代俳都松山大使。

『句集 伊月集 龍』(朝日出版社)、『「月」の歳時記』(世界文化社)、『季語道場』(NHK出版)、『おウチde俳句』(朝日出版社)など著書多数。