夏井いつき 17音の旅 第60回

今日の一句

8月2日(月) 季語「短夜みじかよ」/三夏

竹下しづの女(たけした・しづのじょ) 1887〜1951年、俳人。

 夏の短い夜。乳が足りないのか、オムツがれたか、暑くて寝られないか。泣きたいのはこっちだ。もうこんな子は捨てっちまおか、となげきつつ、若い母親は赤ん坊を抱き寄せ、乳を含ませる。
 下五の漢文表記に目がいってしまう作品だが、実は中七の描写が肝。乳をせまって(欲しがって)泣くの意である「乳ぜり泣く」こそが、この句のリアリティを支える五音。「須可捨焉乎すてつちまおか」は、本音をくるんだ子をあやす言葉であり、子を思う心の裏返しでもあるのだ。

About the author

1957年、愛媛県生まれ。中学校国語教諭の後、俳人へ転身。藍生俳句会会員。「第8回俳壇賞」受賞。創作活動に加え、俳句集団「いつき組」組長として、俳句の授業「句会ライブ」、全国高等学校俳句選手権「俳句甲子園」の創設にも携わるなど幅広く活動中。TBS系「プレバト!!」俳句コーナー出演などテレビ・ラジオにも出演多数。松山市公式俳句サイト「俳句ポスト365」、朝日新聞愛媛俳壇、愛媛新聞日曜版小中学生俳句欄、各選者。2015年より初代俳都松山大使。

『句集 伊月集 龍』(朝日出版社)、『「月」の歳時記』(世界文化社)、『季語道場』(NHK出版)、『おウチde俳句』(朝日出版社)など著書多数。