夏井いつき 17音の旅 第75回 季語「月」/三秋

今日の一句

9月23日(木) 季語「月」/三秋

栗林一石路(くりばやし・いっせきろ) 1894〜1961年、俳人。

 ゆうりつ俳句という立場で、眼前にある「月」が「ひん曲がって」いる事実だけを伝えるのであれば、「月がひん曲がる」でもいいようなものだが……いやいや、そうじゃないのだな。社会や時代や人間関係や思想や感情や「なにもかも」がひん曲がっているから、よいの「月」までひん曲がってけつかる! という悪態だ。「けつかる」は大阪の旧河内国かわちのくにあたりの言葉かと思うが、ここまで言い放った後に漂う無力感や虚無感。頭上には、ひたひたと秋冷を帯びた月。

About the author

1957年、愛媛県生まれ。中学校国語教諭の後、俳人へ転身。藍生俳句会会員。「第8回俳壇賞」受賞。創作活動に加え、俳句集団「いつき組」組長として、俳句の授業「句会ライブ」、全国高等学校俳句選手権「俳句甲子園」の創設にも携わるなど幅広く活動中。TBS系「プレバト!!」俳句コーナー出演などテレビ・ラジオにも出演多数。松山市公式俳句サイト「俳句ポスト365」、朝日新聞愛媛俳壇、愛媛新聞日曜版小中学生俳句欄、各選者。2015年より初代俳都松山大使。

『句集 伊月集 龍』(朝日出版社)、『「月」の歳時記』(世界文化社)、『季語道場』(NHK出版)、『おウチde俳句』(朝日出版社)など著書多数。