夏井いつき 17音の旅 第86回 季語「行く秋」/晩秋

今日の一句

11月1日(月) 季語「行く秋」/晩秋

石橋秀野(いしばし・ひでの) 1909〜1947年、俳人。

 短歌は与謝野晶子に、俳句は高浜虚子に学び、夫は評論家山本健吉。そんな事実のみをみれば、表現者として恵まれた環境にあったともいえるが、戦争による生活苦と病にて、一人子を残し38歳で死去した。そんな境涯を重ねて読めば、季語「ゆく秋」そのものが切々と身に沁みもする。
 ゆく秋を身近に感ずるのは、朝の洗顔の水か。口をすすぐために含んだ水が、思いの外柔らかいと感じた。気温と水温の微妙なバランスによる「やはらかき」という感知は、まさに「ゆく秋」の本意というべき。連体形の余韻に読者の心は揺らぐ。

About the author

1957年、愛媛県生まれ。中学校国語教諭の後、俳人へ転身。藍生俳句会会員。「第8回俳壇賞」受賞。創作活動に加え、俳句集団「いつき組」組長として、俳句の授業「句会ライブ」、全国高等学校俳句選手権「俳句甲子園」の創設にも携わるなど幅広く活動中。TBS系「プレバト!!」俳句コーナー出演などテレビ・ラジオにも出演多数。松山市公式俳句サイト「俳句ポスト365」、朝日新聞愛媛俳壇、愛媛新聞日曜版小中学生俳句欄、各選者。2015年より初代俳都松山大使。

『句集 伊月集 龍』(朝日出版社)、『「月」の歳時記』(世界文化社)、『季語道場』(NHK出版)、『おウチde俳句』(朝日出版社)など著書多数。