夏井いつき 17音の旅 第90回 季語「冬」/三冬

今日の一句

11月15日(月) 季語「冬」/三冬

篠原鳳作(しのはら・ほうさく)1906〜1936年、俳人。

 セロとは、楽器のチェロ。古い楽器はそれなりの価値があるとも考えられるが、この句の上五は「ふるぼけし」だ。決して高価なものではないが、ずっと僕とともに暮らしてきたセロに違いない。この句を読んで、宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』の物語を思い出す人も少なくないはずだ。
 セロの他には、何もない部屋。セロを弾くことが生きる喜びである僕。貧しさや孤独を抱えつつも、両手に抱くセロは、僕の心のよりどころなのだ。下五「僕の冬」という表現の若々しさが、色せぬこの句の魅力でもある。

About the author

1957年、愛媛県生まれ。中学校国語教諭の後、俳人へ転身。藍生俳句会会員。「第8回俳壇賞」受賞。創作活動に加え、俳句集団「いつき組」組長として、俳句の授業「句会ライブ」、全国高等学校俳句選手権「俳句甲子園」の創設にも携わるなど幅広く活動中。TBS系「プレバト!!」俳句コーナー出演などテレビ・ラジオにも出演多数。松山市公式俳句サイト「俳句ポスト365」、朝日新聞愛媛俳壇、愛媛新聞日曜版小中学生俳句欄、各選者。2015年より初代俳都松山大使。

『句集 伊月集 龍』(朝日出版社)、『「月」の歳時記』(世界文化社)、『季語道場』(NHK出版)、『おウチde俳句』(朝日出版社)など著書多数。